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windbell wb28
2010/09/17 release
01. 扉 entrée
02. 19本の薔薇 les dix-nuef roses
03. 欧州ワルツ der waltzer für Europa
04. トビアスのこと tobias
05. ラチは弱虫 laci
06. 気取り屋と野暮天 a snob and a boor
07. ナンバー2 No.2
08. コヌウォールの賢人 a wizard from Cornwall
09. 五音階の屈折率 refractive index of the pentatonic scale
10. ねじ巻き clockwork
11. 哀歌 August
12. ヒマラヤ杉のある庭 cedar garten
13. 三月のワルツ waltz in March
※試聴はMySpaceでどうぞ→ http://www.myspace.com/takeotoyama
鍵盤を押して、音を聞く
ー自分の荒削りな演奏でさえ、それだけで実に多彩な音色が、
繊細なニュアンスが生み出せることにわたしはあらためて感動した。
ただ音符を見つめるだけで、わたしたちが楽譜と呼ぶこの驚くべき記号体系が、
わたしの両手にモーツァルトの思念をよみがえらせる手段をあたえてくれる
ーそう考えると、わたしは感嘆せずにはいられなかった。
わたしは正しい鍵を押しさえすればいいのだ。
ーそれがけっして容易なことではないのは確かだが、不可能なことでもなかった。
ーそうすれば、この巧妙に作られた機械を通じて、わたしは作曲家の考えを理解し、
それを物理的な運動から音楽という無限の軌道に打ち上げることができるのだった。
最後の和音が宙をただよい、ゆっくり消えていくのを聞きながら、
わたしは椅子から立ち上がって、このわたしのものである、
しかしけっして完全にはマスターできないであろう、
いつ見ても不思議な楽器の内部をのぞきこんだ。
もちろん、どんな音楽かは重要だった。
ーモーツァルトはあくまでモーツァルトなのだから
ーけれども、たとえどんな曲を弾くときでも、
わたしのピアノは深い満足感を与えてくれた。
感情的、肉体的、知的、精神的な満足感はほとんど無限で、
わたしの生活にきわめて大きな影響を与えていた。
わたしは部屋の反対の端から眺めて、その三角のコーナーが
空っぽだったときのことを思い出そうとしたが、
それはまるで別の人生でのことだったような気がした。
T.E. カーハート 著 村松潔 訳
「パリ左岸のピアノ工房」(新潮社)
24章「もう一台の夢のピアノ」より転載
Gonzales “solo piano”, Mono Fontana “cribas”, Hauschka “Ferndorf” ….
近年、パリ、ブエノスアイレス、デュッセルドルフから届けられた静かなる傑作ピアノ・アルバム。
いずれもジャズ、クラシック…といったフィールドからではない、
在野のタフな男たちが長いキャリアの過程で差し出した深い響き。
これらのアルバムに連なる、タイムレスなアルバム、ここに登場!
written and played by takeo toyama
recorded by Hauschka at studio zwei, February 2010
artwork by nakaban
カタログ番号:windbell wb28
定価:¥2,400(税抜)¥2.520(税込)
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西に潜む賢人がここに一人。
どこかロバート・ワイアットを思わせる朴訥さ、周縁にいながらも示す存在感は
中心(東京を今さら中心というのなら)の音楽家たちを驚かすかもしれない。
Ego-Wrappin’、mama! milk、高木正勝、サケロック….といった日本のアーティストたちは自身の作品にトウヤマを迎え、編曲家・ピアニストとしての力をかりている。
nakabanのDVD作品「Der Meteor」、mama! milkの最新作「Parade」そして前作「Fragrance of Notes」におけるピアノの響き、編曲の妙に魅せられていた方も少なくないだろう。
海外では Joerg Follert (Wunder / Wechsel Garland)がこんなことばを寄せている。
「トウヤマタケオは、クラシックのセンスをもちつつ、音楽の現代性を貪欲に探し求める作曲家だ。
美しい音楽に秘められた英知は、ことば以上にこの世界を表現している。
それも、ユニークで有機的なスタイルで。彼の音楽は心に響く。
信じられないほど情熱的で多彩。これは天からの贈り物。」
ヨルグは2007年11月、トウヤマ、竹村延和、Kama Aina(青柳拓次)を招聘しベルリン公演を実現している。
このアルバムを紹介するにあたり、Hauschka(ハウシュカ)に触れないわけにはいかない。
物語は2005年のヨーロッパ・ツアーから始まる。
ドイツのレーベル「Karaoke Kalk」から作品をリリースし、ツアーのため渡欧したトウヤマは
現在、世界的な活動を展開しているハウシュカに出会う。
日々、街から街への移動、会場毎に異なる音響エンジニアとの出会う中、
ツアー初日にトウヤマが望む音色をエンジニアに的確に伝えたのが、ハウシュカだったという。
8カ国16箇所を巡るツアーを共にした二人の再会は2008年のハウシュカの初来日時には叶わなかったが、2009年秋の二度目の来日時に再会、二都市で公演を共にした。
このアルバムの録音をデュッセルドルフまたはベルリンでするというアイディアは
ツアー中のある午後カフェで交わした会話に端を発している。
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*words for " Waltz in March "
ぼくが「Hauschka」として活動を始めて、
最初にツアーを共にしたのがタケオトウヤマだった。
ぼくらは「Karaoke Kalk」から作品をリリースしていたからね。
すぐに彼ならではのアレンジと美しいメロディ、
その融合の仕方の大ファンになった。
二度目のジャパンツアーのあと、
今年に入って、タケオはこのアルバムに収録されている楽曲を携えて
デュッセルドルフにやって来た。
いくつかの曲は去年のツアーでも披露されていたね。
レコーディングした部屋には彼独自のコード進行とメロディに満ち溢れた。
このアルバムのように独自の音楽のみで見事な建築物を築くには個性が必要だ。
タケオの澄んでいて強いキャラクターがすべての楽曲に息づいている。
才能があって、すばらしい人なんだ。
Volker Bertelmann aka Hauschka
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無礼を承知で、試しに自分をドビュッシーに置き換えてみる。
バルトークから楽譜が届いた。
その一音一音は、自分の全人生の経験に照らしてみて、
まったく知らない言語で語られていた。
そこで語られる詩世界も、見たことのないものだった。
無表情で美しい和声の行列。質素と苦さの混淆する旋律。
おとぎ話と小舞曲はたわいない外見を装う。
この知覚喪失の詩世界は、楽譜の送り主の夢をつつんで隔離している
―こんなことを、ドビュッシーは思っただろう。
そしてピアノの前に座り、楽譜をなぞりながら、
遠くのバルトークを恋い焦がれる気持ちで自らの指で感じるのだ。
阿部海太郎
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